冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~
そして、それは諒太が彩実との結婚を嫌々ながらも受け入れた瞬間でもあった。

その後、彩実も賢一から小関家具との関係を続けたければ結婚しろと言われ、受け入れるよりほかなかった。

そうして彩実と諒太の結婚が本人の気持ちを置き去りにしたまま決定され、早速今日はこれから衣装合わせだ。

「衣装なんて、なんでもいいけど」

彩実は、昨夜電話で「衣装合わせがあるから仕事の後急いで来い」と諒太から言われて以来続く緊張を押しやるように、ため息を吐いた。



白石ホテルに着いた彩実は、ロビーで待ち構えていたホテルのブライダル担当の飯島という女性に連れられ、まずは彩実と諒太の披露宴が予定されている会場に案内された。

そこは天井まで続く大きなガラス窓が一面を占める大宴会場で、彩実はその広さに圧倒された。

白石ホテル次期社長の結婚式だ、かなりの規模のものになるだろうと考えていた彩実だが、自分の考えがまだまだ甘かったことに気づいた。

国内屈指の高級ホテルとして知られている白石ホテルには、世界各国の王族や要人が来日の際に宿泊することも多く、そのサービスと万全の警備体制には定評がある。

大物政治家や芸能人が結婚式を挙げたり記者会見の場として使われたり、どちらかといえば華やかさを前面に押し出しているホテルだ。

彩実もそれはあらかじめ理解していたが、いざ自分が白石ホテルで結婚式を挙げることとなり、予想を遙かに超えた規模の披露宴になりそうだと目を丸くした。

ホテルで一番広い会場での披露宴は想定内だったが、まさか八百人超の招待客が予定されているとは考えてもいなかった。

「どこかの芸能人じゃないんだから……」

思わず彩実の口から洩れた声に、傍らに立っていた諒太はバカにするような声で笑った。

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