冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~
「白石ホテルと如月ハウスの披露宴なんだ、もっと大勢呼んでもいいくらいだが、如月の会長が、後継者であるお兄さんの結婚式ならともかく、自分とは多少の血縁関係があるとはいえ、戸籍上の孫にすぎない君に豪華な式や披露宴を用意する必要はないと言い出したんだ」

「あ……そうですか」

彩実の反応をうかがうような冷たい諒太の声に、彩実はとくに驚くこともなく平然と答えた。

諒太の声音からは、彩実が傷つくのを期待しているような意地の悪さを感じた。

ただ、彩実への愛情など少しも持ち合わせていない賢一の言い出しそうなことだと、うんざりしただけだ。

傷つくというのなら、賢一の言葉以上に、今日もまた彩実と会った早々不機嫌な表情を浮かべた諒太の態度こそ、彩実を傷つけている。

彩実もそれを覚悟してこの場に来たが、この宴会場に足を踏み入れた途端、さきに来ていた諒太に睨まれるとは想像していなかった。

無理矢理結婚を強制されているのは諒太だけでなく、彩実も同じだ。

だというのに、自分ひとりがこの結婚の被害者だとばかりに冷たい態度を崩さない。

ふたりの結婚式と披露宴の担当である飯島は、剣のある態度を続ける諒太に戸惑いながらも、彩実に資料を見せながら会場内を説明する。

その中でも、白石ホテルの創業者が大のクラシック好きで、年に一度この部屋で大規模なクラシックコンサートを開くために、この部屋の設備はなにもかもがずば抜けてすばらしいらしいと聞かされ興味を持った。

すると、飯島が思いついたように口を開いた。

「私には音楽的な知識はゼロなのでよくわかりませんが、この部屋は演奏会やコンサートを開くにはもってこいの環境らしいですよ。ですから、もしも新婦様のご友人の中で当日お歌を披露される方がいらっしゃれば、気持ちよく歌っていただけるはずです」

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