冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~
彩実の学生時代の友人の名前や仕事関係でお世話になったひとの名前までが列挙されているのを見て、賢一のその情報収集力に心底驚いた。

「いったいどうやって調べたんだろう……」

彩実は首をかしげるが、会社のためならあらゆる手段を講じてでもベストを尽くす賢一のことだ。

財力と伝手を総動員して調べて作り上げたに違いない。

「おじい様のすることに、今更驚いても仕方がないか」

たしかに驚いたが、賢一が決めたことが如月家の総意となるのだ、淡々と受け入れるしかない。

「それにしても、すごい人数……あ、忍君はご両親も招待されてる。それと……あっ」

彩実はリストの中にフランスに住む親戚たちの名前を見つけて声をあげた。

「ハンナおばちゃんもシオンもマークも……すごい、みんな勢ぞろい」

母方の親戚たちの名前がいくつも並び、彩実はタブレットを手にしたまま軽く飛び上がった。

まさか賢一が自分とはなんの縁もない麻実子の母方の親族をわざわざ招待するとは思ってもみなかったのだ。

見知らぬ名前のほうが多い招待客の中に、自分の味方を見つけたようで、彩実は大きな笑顔を見せた。

そして、披露宴でみんなに歌をお願いしようと思いついたとき、ふと気づく。

「フランスからみんな来てくれるかな……。ハンナおばちゃんも、晴央おじちゃんも、足が弱ってきてるらしいし……。直行便でも長い間座りっぱなしなんて体に悪いし」

麻実子の叔父、晴央と妻のハンナは今年八十歳を超え、そろそろ葡萄畑の仕事にも無理が出てきている。

もちろん人を雇って収穫やワインづくりを行っているが、ふたりとも畑に出るのが大好きなのだ。

日常生活に大きな不便はなく、ボケることなくはつらつとしているが、やはり体力の衰えは顕著だと、親戚からのメッセージの中に書かれていた。

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