冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~
結婚式に来てもらえるのかどうかが気になるのはもちろんだが、しばらく会っていない親戚たちの体調が心配になり、彩実は黙り込んだ。

「マリュス家の人間が、民間機で来ると本気で思ってるのか?」

「……え?」

諒太のイライラした声に、彩実は顔を上げた。

「フランスからプライベートジェットで日本に来るそうだ。だから、長時間座りっぱなしで体調を崩す心配はそれほどない。高齢の方もいるから、専属のドクターも同行する」

そんなことも聞いていないのかと、暗にほのめかすような馬鹿にした口調に、彩実はそうだったとうなずいた。

「あ……そっか。そういえば、何機かプライベートジェットを持ってました。いつも私のために飛ばしてくれようとするんですが、わざわざ申し訳ないからいつも断ってるので乗ったことはないんですけど。……あ、だったらみんながフランスに帰るとき、私もプライベートジェットに乗せてもらってフランスに行こうかな」

彩実はしばらくみんなと一緒にいたいと思ったが、目の前の諒太が顔をしかめたのを見てハッとし、それは無理だと気づいた。

そのころ自分は結婚しているのだ……この厳しい表情を続ける男前と。

「む、無理ですよね……。わかってます」

体を小さくして謝る彩実に、諒太はよほど気分を悪くしたのか無言のまま眉をひそめた。

言葉にしてくれたほうが気が楽なのだが、諒太はそれも面倒なのか深いため息をひとつはいただけで口を閉じた。

ふたりの間に気まずい空気が流れるが、それに構わず飯島が明るく口を開いた。

「あの、新婦さまは、フランスの血が混じっているのですか?」

< 45 / 157 >

この作品をシェア

pagetop