冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~
「あ、そうなんです。曽祖母がフランス人なので、八分の一がフランスで、あとは日本なんです。なんでも日本人の曽祖父が大昔、フランスに留学して曽祖母と恋をしてそのまま結婚したらしいんです。曽祖母はフランスで大きな葡萄畑を持つ有名な一族の娘で大反対されたそうなんですけど、強引に結婚しちゃって。すでに亡くなってますけど、仲の良い夫婦だったそうです」

「すごい。そんな昔に国際結婚なんて、ドラマティックですね」

目をうるうるさせて彩実の話に聞き入る飯島に、彩実もこくこくうなずいた。

諒太との気まずい沈黙の反動か、やけに饒舌だ。

「そうなんです。おまけにふたりの間に生まれた子どものひとりが日本に遊びにきたときに、今度は日本人の男性と恋に落ちてそのまま日本で結婚してしまって。そのふたりが私の祖父母です。祖父は如月ハウスの会長の弟なんですけど、フランスのほうが性に合ってると言って、今では家業を放り出してフランスで祖母や親戚たちと仲良く暮らしてます。あ、この如月吾郎と菜緒美というのが祖父母です」

彩実はタブレットの画面にある祖父母の名前を見つめ、久しぶりに会えそうだと口元を緩めた、

真面目で優秀、如月ハウスの後継者として期待されていた兄、賢一と違い家業のことなど後回しで自由気ままに生きていた吾郎が、たまたま日本に来ていた菜緒美と恋に落ちた。

フランスでも有名な葡萄農家一族の娘との結婚は障害も多かった。

フランスから菜緒美を連れ戻しにきた親族とも揉め、駆け落ちも真剣に考えたらしいが、当時如月ハウスを引き継いだばかりの賢一が間に入り、話をつけた。

如月家の親戚の中には政界の実力者と言われる者もいて、吾郎と菜緒美の結婚の許可と引き換えに、その親戚を紹介することでふたりの結婚を認めさせたのだ。

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