冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~
『その白石って男、何度か同友会の会合で会ったことがあるが、若造のくせに生意気でむかつく男だ。だが如月家の将来を考えれば白石グループとの縁はどうしてもほしい。ちゃんとそいつの身上書を読み込んで相手に気に入られてこい。しくじるなよ』

慣れているとはいえ彩実の気持ちにはいっさいの配慮をしない賢一の言葉に、彩実は寂しさを隠すようにただうなずいた。

寂しいが、それも仕方がないかと、あきらめてもいる。

戸籍上では孫であるが、血縁上では彩実は賢一の弟・吾郎の孫だ。

だからそっけなく扱われても仕方がないと、子どものころから何度も味わってきた寂しさをおしやった。

「あ、そんな同情するような目で見ないでください」

彩実はかわいそうな捨て猫を見るような目で見つめる芝本に、眉を寄せた。

彩実の兄の大学時代からの親友である芝本は、如月家というややこしく面倒な家の事情を知っていて、彩実のことも「難しい立場にいる女の子」として見ている。

同情しているといってもいいかもしれない。

「とにかく、まずは小関家具の商品の採用が決まったから、それでOK。お見合いも、私と結婚しても白石家になんのメリットもないとわかれば先方から断ってくるだろうから、大丈夫。私にはなんの変化もない」

彩実は話はこれで終わったとばかりにきっぱりと言い切った。

目の前には、小関家具の商品が採用されると決まったモデルハウス。

この半年心血を注いだプロジェクトが、すでに成功した気分だ。

彩実は気を緩めると賢一からの心無い言葉に落ち込みそうになる心をどうにか盛り上げ、口元をひきしめた。




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