冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~
披露宴の進行や新郎新婦のサポートはすべて婚礼部と宴会部が取り仕切り、彩実には絶えず飯島が側につきお世話をしているのだが、何故か広報宣伝部の三橋がしょっちゅうふたりのもとにやってくる。

マスコミが多くやってきていることもあるが、諒太と彩実の今日の姿を来年のブライダルのカタログに使用することになり、披露宴の合間に何度かその撮影も行っているからだ。

カタログだけならまだしも、ブライダルサロンの大画面で流すイメージビデオとしても使いたいということで、会場のあちこちから何台ものビデオカメラが向けられている。

ただでさえ緊張しているというのに余分な仕事が増えたようで、その話を今朝三橋から聞かされたときにはムッとしたのだが、諒太が承知していると余裕に満ちた表情で言われれば、それ以上三橋に抵抗できなかった。

「次のお色直しの後、会場に入場していただく前に螺旋階段と中庭で撮影をさせていただきます」

三橋は諒太と彩実の間に膝をついて話しているのだが、彩実には目もくれず諒太に向かって話し続けている。

今に始まったことではなく、今朝顔を合わせて以来ずっとそうなのだが、あまりにも露骨なその態度に彩実は呆れていた。

お客様が相手の仕事という、三橋と同じ立場の彩実にとって、その態度は納得できないのだ。

披露宴と同時進行で撮影も行うというのなら、彩実にも詳しく段取りを説明するべきなのに、ひらすら諒太にばかり話しかけている。

今もタブレットに表示されているタイムテーブルを諒太に見せながら、彩実には背中を向けたままだ。

それ以前に、披露宴の最中にわざわざ高砂まで来て話すことはないだろうとうんざりしている。

よっぽど諒太が好きで、今も諦められず彩実への敵意でいっぱいなのだろうけれどホテル従業員としては失格だ。

それを許している諒太も諒太だ。

< 96 / 157 >

この作品をシェア

pagetop