同窓会〜あの日の恋をもう一度〜
これを見た時に、私は不覚にも涙が溢れて来た。

「お金の大切さを知っている子に育った事が、私達は嬉しいよ」

両親にこう言われ、それまで確かに贅沢な生活とは言えないけれど、愛情に溢れた生活を過ごしていた事を実感した。

両親が田舎に古民家を購入して引っ越しをする際、私も本当は一緒について行こうかと思ったけれど、両親の元に戻るのはいつでも出来る。
お金で買えない、今しか出来ない事をやりなさいと一人暮らしをする事に背中を押してくれた。

就職先は、我が家の事情を知っている税理士さんが、うちにおいでと声をかけてくれて、身元引受けも兼ねてくれる事になった。

だから両親も安心してこの地を離れて行った。

三上(みかみ)税理士事務所の所長で、こちらでの親代わりの三上先生は、還暦を迎えた今尚健在だ。

就職して三上先生にお世話になりこの春で丸五年、私が入るまで人の入れ替わりもなかったらしく、そして私の後にも新規採用者や中途採用者はおらず、未だ私は下っ端だ。
職員は女性が多いけれど結婚してもパートで仕事を続ける人も多く、人見知りな私としては自分の立場がまだまだ下っ端でも安心出来る。

職場の人達は、私を年の離れた妹、または娘を見るような温かい目で見守ってくれている。
それは色々な意味で。

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