同窓会〜あの日の恋をもう一度〜

懐かしさと戸惑いと

引き戸に手をかけて、そっと教室の扉を開ける。
カラカラと乾いた音を立てながら視界に入ったのは、懐かしい教室だ。

入学して、確かドキドキしながらこの教室に入ったんだった。
あの頃の記憶が蘇る。

そして、坂本の書いたメモの水槽は、あの頃とは設置場所が変わり、教室の一番後ろのロッカー横に置かれていた。

あの頃は、誰かが熱帯魚を持って来て飼育していたけれど、今は何が飼育されているのだろう。

「……入ってもいいの?」

「入らないとメモは取れないだろう?」

当たり前の様に応えてくれる。
何かあったとしても、教職員が一緒にいるのだから問題ないのだろう。
私は小さな声でお邪魔しますと言って、教室の中に一歩踏み入れた。

教室は相変わらず板張りの床で、歩くと少し軋む音がする。
キョロキョロと教室内を眺めながら、目的である水槽に辿り着くと、水槽の中に魚はおらず、メモがあった。

『音楽室、グランドピアノ』

今度は特別教棟だ。
メモ紙を回収してそれを坂本に見せると、彼は頷いて教室を後にした。
私も急いで坂本の後を追う。

学生の頃は上履き用の靴で、教室内を駆け回る事が当たり前だったけれど、今はスリッパだ。
しかも学校のではなく、明らかに坂本が持ち込んだであろう、この場に似つかわしくない可愛いモコモコのスリッパ。

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