同窓会〜あの日の恋をもう一度〜
こうやって足を踏み入れる教室に、それぞれの思い出がある。

そういえばこの音楽室で合唱コンクールの練習をしていた時に、指揮担当だった坂本が放課後残って指揮棒(タクト)を振る練習をしていたよな。

私は当時、二ヶ月だけ吹奏楽部の助っ人をする事になり、音楽会に参加する為にトロンボーンを吹いていたのだ。
小学校の時に鼓笛隊でトロンボーンの担当だった私は、腕を骨折して音楽会に出場出来なくなった後輩の代理で、先生に頼まれて無理矢理参加させられた。

トロンボーンの特訓中に、坂本が指揮の練習をしたいからと言って、私が演奏する曲に合わせてタクトを振って練習していた。

坂本とは三年の時だけ同じクラスだった筈だけど、意外と共通の思い出があった事を教室に入って思い出す。

次に向かう二年三組の教室にも、坂本との思い出があった。

ここは私が二年の時の教室で、確か坂本は二組だったと思う。

夏休みに入る前、期末テストが終わってすぐの頃、珍しく坂本が英語の教科書を忘れたと言って同じバスケ部の子に教科書を借りに来た事があった。
その子も教科書を忘れて来ており、隣の席に座る私に坂本が教科書を貸してくれと直談判して来たのだ。

教科書を貸して戻って来た時に、ありがとうの言葉と一緒に飴玉を渡された。

甘酸っぱいレモン味の飴玉を、当時は何も考えずに食べた記憶がある。

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