同窓会〜あの日の恋をもう一度〜
「足、捻ったりしてないか?」

坂本はそう言うと、私と視線を合わせない様にその場に屈み込んだ。
階段でこんな事になると思いもよらなかったので、お互い恥ずかしさを紛らわせる。

「う、うん、大丈夫! だから、パソコン室に行こう?
坂本が教室の鍵開けてくれなきゃ中に入れないから先に行ってくれる?」

「あ、ああ、わかった。先に行ってるから早く来いよ」

お互い照れ隠しなのは分かっている。
坂本もそのまま先にパソコン室へと向かって行く。
私はその後ろ姿を見送りながら、何度も深呼吸をして気持ちを落ち着かせていた。

この年齢(とし)で、まさかの初恋だ。
恋愛初心者に、この様なシチュエーションはいくら何でもハードルが高すぎる。
せめて、十年前ならまだしも……。

と言っても、十年前でも十五歳。
初恋と言うには遅すぎる年齢かも知れない。

でも実際のところ、自覚がなかっただけで、きっとあの頃から私は、ずっと坂本の事を意識していたのだ。
これは立派な私の初恋だ。

でも、その初恋が成就するとは限らない。
私一人だけでは恋は出来ない。
私の気持ちだけではどうにもならない。

坂本は私の事をどう思っているのだろう。

こうしてわざわざ二人だけで会う様に仕組んだのは……。

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