隠れイケメンの王子様に恋しました
・・・・・

廊下を歩けばそこかしこからねっとりとした視線が纏わりつく。
遠目でこちらを見てはヒソヒソと、すれ違えば振り向き様に思わせ振りな目線を投げかけられ、うっかり目が合ってしまったらきゃあきゃあと騒ぎ出す。

「ちっめんどくせえ…」

つい口が悪くなるが昔からそうだった。

下手に顔が整ってると何かと騒がれ追いかけられる。
煩わしいったらありゃしない。
毎度こんな感じでイライラしながら本社に通っていた。

これならのっぽメガネと揶揄され敬遠されてる方がましだった。

高校まで普通の格好していてこんな感じで煩わしくなって、大学入学を期に伸ばした髪をわざとボサボサにしてメガネを掛けて視線を避けるようになった。

所謂大学デビューの逆バージョン。
たまにこれ見よがしに悪口を言われたりするもののそんな事は気にならないし俺の周りだけは静かだった。
気になる視線が遮られただけで安心していられた。

兄貴はそんな事はなかったのか聞いてみたら、

「騒がれた事もあるし、ファンクラブが勝手に作られたり、しょっちゅう告られたりしたけど気にはならなかったかな?」

と、飄々と言ってくる。
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