隠れイケメンの王子様に恋しました
………

「兄貴、お願いついでに…」

「なんだ?」

「車、貸してくれないか?」

「はあ?」

怪訝な顔をする兄貴に振り向き様慌てて言い訳をする。

「ほら、俺今車持ってないし、給料安いから買えないし!兄貴何台も持ってるだろ?1台くらいちょっと貸してくれてもよくない?」

細目で睨んでくる兄貴にたらりと汗が流れた気がした。

「なるほど、連休もらえたから彼女とドライブでもしたいと、そういうことだな?」

「っ…!」

図星を突かれつい目が泳いでしまう。
やっぱり兄貴にはお見通しのようだ。

「ったく、御影の人間なくせに我が社の車を持ってないなんてどうかと思うが?」

「いや、だから!」

「わかったわかった、もういい、実家に行って好きな車乗っていけ。当分貸しといてやるから御影の車がどんなにいいか体感しろ」

「へ、いいの?」

「可愛い弟のお願いを聞かない訳にはいかないだろ?そろそろ立花を返してもらわないとと思ってたところだし。その代わりちゃんと自分で本社に来いよ?」

「おう!サンキュー兄貴!」

可愛い弟だなんて思ってもいないくせに、と思いつつ、兄貴の気が変わらないうちに踵を返して実家に寄り、何台もある中の1台エヴァンを借りることにした。
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