隠れイケメンの王子様に恋しました
……

グスッ…う……

いつも以上に疲れ果て眠ってしまっていた。
何かが聞こえて夢の中にいた意識がうっすらと浮上する。

「…雪都…御影さんになったら…私…やっぱり別れなきゃいけないのかな…」

眠ってる俺の頭を抱き締めたなの葉はぐすぐすと鼻をすすって身動ぎする。
その度に柔らかい胸が頬に当たって気持ちいい…って言ってる場合じゃない!

聞き捨てならないことをなの葉が呟いてふわふわしてた脳が覚醒した。

なの葉がそんなこと考えていたなんてつゆにも思わず、さっきは思わず夢中になってしまって自分から振った問題は吹っ飛んでいた。

ぎゅっと腰に手を回して抱き締めるとビクッと震えるなの葉。

「ゆ、雪都…起きてるの?」

「バカだななの葉は」

「え…?」

「こんなに好きなのに、苗字が変わったぐらいで別れるわけないだろ?」

柔らかい胸から顔を上げると月に照らされたなの葉の顔は涙に濡れていた。
這い上がって同じ目線になり濡れた頬を拭ってやると眉根を寄せて見つめてくる。

「でも、雪都は御影社長の息子さんだし、御影さんになったら私となんて釣り合わないよ。もっと相応しい人が出てきたら、私は…」

「…身を引く?」
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