隠れイケメンの王子様に恋しました
「いいか、ちゃんと鍵かけて、風呂入って布団入って寝ろよ。水も飲め、明日二日酔いで酷い目にあうぞ」

腕だけ伸ばしなの葉を玄関に押し込めたイケメンお兄さんは、扉の外で早口でそんなことを言って、じゃあなと帰ろうとするので、なの葉は思わずお兄さんの腕を取って引き止めふにゃりと笑った。

「親切なお兄さんありがとうございます~。…でも、なんで私の家しってるんですかぁ?」

「…っ、可愛いなこんにゃろ…」

「はい~?」

小さく呟くお兄さんを首を傾げて見上げる。
暗くてあまり表情が見えないけど片手で口元を押えているみたい。
街灯に当たってる耳が赤いのは気のせい?

「酒の飲み過ぎは危険だな、気を付けろよ。それと…」

お兄さんはなの葉に向き直り両手でなの葉の頬を包んだ。

「誕生日、おめでとう」

唇に温かくてやわらかな何かがそっと触れた。
なの葉はぼんやりと間近に見えるお兄さんの長いまつげを見ていた。
微かに爽やかな香りがする。

誰かに…似てる…

ふっとその温もりが離れていき、淋しくなったなの葉は離れがたくてスーツの襟をぎゅっと掴んだ。

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