隠れイケメンの王子様に恋しました
「ほら、お前も挨拶しろよ」

副社長に小声で言われしぶしぶ一歩前 へ出たその人をなの葉は信じられない思いで見つめていた。

「よろしく」

たった一言そう言うと黙ってしまった御影部長。

「……あー、じゃあ、忙しいお二方なのでこの辺で。お前ら行くぞー」

中山さんの掛け声でみんなは階段の方へと進む。
でも、なの葉は動けずにずっと御影部長を見つめていた。

「なの葉?」

「…あ」

朋絵の声に気付いたのか反対側に去っていこうとする御影部長が振り向いてなの葉と目が合った。
開いた口を抑えるなの葉。

やっぱりあの人だ!
家まで送ってくれた。
誕生日おめでとうって言ってくれた。
そして…。

御影部長が一瞬ふっと笑った。
一気に頬に熱がこもる。
優しげに細める瞳に釘付けになっていると、御影部長はそのまま踵を返し去って行ってしまった。

「ちょっとなの葉?あの副社長なの?」

「ううん。その後ろの部長さん…。あの人だ、絶対…」

「めっちゃイケメンじゃん!なんであんな人がなの葉の事知ってるの?」

「わからない…。でも、家まで送ってくれて、おめでとうって言ってくれて…」

そして……キスされた!!

思い出した!あのときの事!

まだ断片的だけど、キスされた事ははっきりと思い出せる。

去っていく後ろ姿を見つめて不思議に思う。

あの人は一体…なんで私にキスしたの………?
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