隠れイケメンの王子様に恋しました
一週間はあっという間。

研修を終えて日常の工場勤務に戻ったなの葉だったけど、あれから一度も会えなかった御影部長の事が気になってしょうがない。

もう一度会って、あの時なんでキスしたのか聞きたい…。

「まーたボケーッとしてー!ヤダヤダ色ボケなの葉」

「なによそれ!」

朋絵の言い様にムッとする。

「あのイケメンの部長さんに会ってからずっと上の空だったじゃない。結局なの葉もイケメン好きだったわけよね」

「ち、違うし!あの日の事知りたいだけだし!」

私はただあのキスの意味を知りたいだけ…。

その事は朋絵には話していない。
あの時の事を思い出すと今でもドキドキして、恥ずかしいことに離れていく唇を追うように自分からもキスをねだった。
そんな事も今ははっきりと思い出す。

「~~っ!」

顔が熱くなって手で隠すと身悶えしたくなるのを何とか我慢した。
そんななの葉を呆れた朋絵が釘を刺す。

「まあ、あののっぽメガネよりはいいけど、あの人雲の上の人だから諦めた方がいいと思うよ?」

「違うよ、私が好きなのは……」

私が好きなのは大宮さんだけだし…。

そう言いたいのに、言葉が出なかった。
工場に戻って来て大宮さんと会ったとき、思わず目を逸らしてしまって、それから気まずくてなるべく会わないようにした。

それでも事務室は休憩室も兼ねているし、すれ違ったり食堂で見かけたり、顔を会わさない日はなく、顔を上げないようにしていつも俯きながら大宮さんをチラチラ見ていた。

「とんだ意気地無しだよ私は…」

はあ~っと盛大にため息を吐いて自分の行動に呆れて机に突っ伏した。
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