隠れイケメンの王子様に恋しました
大宮さんの手には鞄に入れたはずのキーホルダー。
慌ててて入れ損ねたみたいだ。

「これ、着けてくれてるんだな」

顔を上げると間近に大宮さんの顔。
口元が僅かに上がるのを見てドクンと心臓が跳ね上がった。

「は、はい…。私のお気に入りです。大宮さんありがとうございます。すごく…嬉しかったです」

「そうか…。良かった」

そう言って大宮さんはそっとキーホルダーを渡してくれて立ち上がった。
その時に私の頭にポンと触れる。

「気を付けて帰れよ、じゃあな」

慌てて立ち上がったなの葉は大宮さんの後ろ姿を真っ赤な顔で見送り、ドアに消えた後も暫く立ち尽くした。


すき……

やっぱり私大宮さんが好き!

声を掛けられただけで
小さく笑っただけで
然り気無く触れられただけで

嬉しくて、嬉しくて

私の鼓動はドキドキと踊り出す。

「ふふふっ…」

お礼が言えて良かった!

なの葉は落ち込んでいたのが嘘のように晴れやかな気持ちで帰って行った。


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