隠れイケメンの王子様に恋しました
それから、大宮さんとはやっぱりあまり会話はないけど挨拶するとき少し恥ずかしくてはにかむと、大宮さんもつられたように口元を上げて挨拶してくれる。
もうそれだけで有頂天になってその日1日ハッピーだった。

そんな何気ない日常を過ごしていたとき。

今日は大宮さんが休みで残念だと思いながら事務室に入るといつもよりざわざわしている。

「おはよ、なの葉。なに戸口に立ってるの?」

「あ、朋絵おはよう」

後ろから来た朋絵も事務室の騒がしさに気付いて二人で目を合わす。
朋絵は近くにいた先輩の吉田さんに話しかけた。

「おはようございます。どうかしたんですか?」

「あ、おはよう朋絵ちゃん。なんと今日本社の御影副社長が視察に来るらしいのよ!」

イケメンって噂じゃない?会うの楽しみだわぁ!
とテンション高めの32才独身吉田さん。

ええっ!!

「えっ!あの副社長!?」

思わず朋絵が大声を上げてざわついてたみんなが振り向く。

「何?知ってる風な言い方ね?」

「あ、私達研修の時に会ったんです。めちゃくちゃかっこ良かったですよ!」

やっぱりそうなの!?
と、その場にいた女子達が大いに沸き立つ。

なの葉だけは青い顔をしていた。

副社長の弟、御影部長を思い出す。

大宮さんとのことですっかり忘れていた。

キス、されたこと…。


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