隠れイケメンの王子様に恋しました
「大宮さんって…」

「ん?」

「バイク通勤だったんですか?」

帰ろうと外を出た大宮さんが向かったのは駐車場で、その端にあったバイクの前で立ち止まった。
徐にバイクに括り付けてたヘルメットを出している。

「そう、俺の家は電車も近くにないから通勤が不便でそこの大通りは渋滞が多いからバイクの方が小回りきいていいんだ」

振り向いてそう言うと私にフルフェイスのヘルメットを被せてベルトを締める。

「で、でも私バイク乗ったことありません!」

被せられたヘルメットで声がくぐもって聞こえる。
そんな私の頭に手を置いた大宮さんの唇が弧を描く。

「俺につかまってれば大丈夫だ。風切って走るのは気持ちいいぞ」

「あ…」

街灯の明かりで浮き出るその表情に固まってしまった。

初めて…大宮さんの笑顔を見た気がする。
嬉しくて心が躍って今ヘルメットの中の私はきっと真っ赤だろう。

そんな私を余所に大宮さんが工場のヘルメットを被りだす。

「お、大宮さん、それ、工場のヘルメット、ですよね…?」

「ああ、予備のヘルメット無いから代用品。同じヘルメットだから問題ないだろ?」

「えええっ!?い、いやいやダメじゃないんですか?危ないですよ!私やっぱり電車で帰ります!ヘルメット返しますから!」

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