隠れイケメンの王子様に恋しました
「何か言いたいことは?」

大宮さんの低い声にびくっとしたお姉さま方。

「な、何もないわ。…悪かったわね…」

そう言ってすごすごと食堂を出て行った。

がやがやとまた喧騒が元に戻る。
チラチラとこちらを見ては何か話してるけどそんなの気にしない。
腕を離した大宮さんがその手を頭に乗せてなの葉の顔を覗き込んだ。

「大丈夫か?」

「は、はい。ありがとうございます」

顔を真っ赤にしてお礼を言うとポンポンと頭を撫でてくれた。

「いやぁ、いいもの見せてもらったなあ。なあ、大宮!」

橋本さんが大宮さんの肩をポンポンと叩いて感心する。

「こいつほんとに怖いんだよ、なの葉ちゃんにちょっかい出すなって本気で殺されかけたんだから!」

「…煩いな」

橋本さんがなの葉にそう言うと大宮さんは嫌そうな顔をして橋本さんの顔を押しやった。

「どういうことですか?」

「何でもない。なの葉、今日一緒に帰ろう」

大宮さんがちょっと恥ずかしそうにしているのがちょっとかわいく見えてなの葉はくすくすと笑って頷いた。
口元に弧を描きまたなの葉の頭にポンと触れると大宮さんはまた橋本さんと食堂を出て行った。
その後ろ姿を見送りトスンと座ったなの葉に朋絵が声を掛ける。

「大丈夫?なの葉」

「うん…」

「よかったわね、大宮さん助けに来てくれて。案外男らしいとこあるわね、見直した」

「でしょ?うふふふっ…」

嬉しくて、ついついに口元が緩む。

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