隠れイケメンの王子様に恋しました
思わず逃げて廊下に出ると、大宮さん、もとい、雪都とばったり出くわした。
ぶつかりそうになって慌てる。

「きゃっ!」

「おっと、どうした?」

いつも通りの雪都は真っ赤になってるなの葉の顔を覗き込む。
そこへ朋絵がひょっこり顔を出した。

「あ、あら、お邪魔だったわね」

ムフフと笑い事務所に戻ってく。
それを見送る雪都が首を捻る。

「なんだ?あれ」

「ううう、もう!雪都のバカ!」

「え、何が?」

キョトンとする雪都に頬を膨らますなの葉は首を押えて雪都を睨む。

「こんなところに、き…ううっもう!ばかっ!」

キスマーク付けて!とは口にできなくてそっぽを向いた。
何の事だか気付いた雪都はなの葉の降ろしている髪の毛を掻き上げ耳に掛けた。

「これの事?」

流れるように耳をなぞり首に触れられゾクッとして、慌てて掻き上げられた髪の毛を戻し撫でつける。

「私知らないで髪縛ったまま電車乗ったんだから!恥ずかしい!」

プンプン怒るなの葉を楽しそうに見ていた雪都はにやりと口元を上げきれいな弧を描く。

「見せびらかすために付けたんだ。なの葉は俺のもの。売約済みだって周りの男に知らしめるために。髪、上げればいいのに」

「や、やだっ!そ、そんなことしなくても私は、雪都の、ものだし…」

段々勢いがなくなって小さくなる声。

言ってくれることは嬉しいから怒りも消えて照れくさくなる。
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