隠れイケメンの王子様に恋しました
「気持ちいい…」

「ん!?なんか言ったか!?」

「風がっ気持ちいいです!!」

「だろ?」

風を切る音で聞こえにくいので大声を張り上げ聞こえるように言うと返事をしてくれた。
怖いと思っていたバイクは風を切り流れる景色に目を奪われ気付いたら楽しくなっていた。
あったかい背中に安心してまたギュッと腕に力を込めた。

約15分程度のバイクの旅はあっという間でなの葉の住むアパートの前に着いてしまった。

「ありがとうございました!すっごく楽しかったです!」

気持ちが高揚したままお礼を言うとヘルメットを脱いだ。

「ここに住んでんのか?」

「はい、2階の一番奥が私の部屋です。見た目オンボロですけど中はリフォームされててきれいなんですよ」

怪訝な顔の大宮さんに慌てて苦笑いで説明する。
ここは見た目ボロイけど家賃も安いし意外に快適な私の城だ。

「いや、安全面を言ってんだが…」

「あっ、ヘルメット!ちゃんとこっち被って下さい!」

ヘルメットを押し付け渡すと、大宮さんは渋々といった態でヘルメットを被り直す。
その時一瞬眼鏡を取ったので覗き込もうとしたら直ぐにメットを被ってしまって素顔は見ることが出来なかった。

「じゃあ…ほんとに送っていただいてありがとうございました」

「…ああ、戸締りちゃんとしろよ」

「はい!大宮さんも気を付けて帰って下さい!」

軽く手を挙げ大宮さんはバイクを走らせ帰って行った。
テールランプが見えなくなるまで見ていると少し登坂の上でチカチカチカとランプが3回点滅して消えていった。

それを見届け家に入ると悶えベッドの上で転げまわった。

どうしよう!どうしよう!嬉しすぎて眠れない!!


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