隠れイケメンの王子様に恋しました
今日もバイクで送ってもらってなの葉のアパートの前。

「ありがとうご…ありがと、雪都」

つい敬語を使いそうになって言い直したらぷっと雪都に笑われた。

「そんな笑わなくたって…」

「ふっ、可愛いなと思って」

「む、可愛くないし」

膨れてヘルメットを押し付け渡すと雪都はククッと笑ってそれをバイクに括り付ける。
その背中に抱き着きたくて、触れたくてうずうずしていると振り返った雪都がなの葉の手を取った。
反対側の手も取って雪都の腰に巻き付ける。
雪都はなの葉を腕で包んで手を組んだ。
間近にいる雪都はヘルメットを被ったままだから表情が見えない。

「触りたいんだろ?遠慮すんなよ」

「ちっ、ちがっ…」

「俺は触りたい」

「っ…!」

目を丸くしたなの葉は照れくさくなって雪都に抱き着いた。
爽やかな香りが鼻をくすぐって、ほうっと息を吐いて素直になろうって思った。

「は、離れたくない…うち、寄ってく?」

「喜んで」

そう言うと雪都は被ってたヘルメットを取ってボサボサの頭を振る。
その前髪を掻き上げる姿を見て思い出した。

「あ、御影さん」

「む…そう言えば、なの葉は今の俺と、御影でいる俺のどっちを好きになったわけ?」

んん?と迫ってくる雪都がちょっと膨れてるものだからなんだか可愛くて、えっとおーと焦らしてみた。

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