隠れイケメンの王子様に恋しました
それから、なの葉を見かければ目で追ってコロコロ変わる表情に一喜一憂していた。

仕事を覚えようとする真剣な顔。
周りに気を使ってる顔。
楽しそうに笑ってる顔。

なの葉の笑顔は周りを明るくしてくれる不思議な力があるのか、なの葉の周りはいつも穏やかで笑いが耐えない。
そんななの葉を見て自分の頬が緩むのを止められずに橋本に見られたこと数回。
直ぐにからかってくる橋本をかわすのも慣れたものだった。

そんな中、何か失敗でもしたのか悔しそうな顔を人目の無い廊下で見かけたときに声を掛けたかったけど…。

自分はこんな成りだし、声を掛けられたら気持ち悪いかなと躊躇した。
そうしてるうちに同期の益川がなの葉を見つけ連れていってしまった。

187cmの身長、ボサボサ頭に黒縁メガネ、ヨレヨレの作業服。
工場の女子達にのっぽメガネと揶揄されてるのは知っていた。

わざとそうして敬遠されるように仕向けていた俺はその時初めて自分の姿に後悔した。
他の女子達に何て見られようが構わないけど、なの葉にあの怪訝な目で見られたくはなかった。

前の姿でいたら不振がられずに声を掛けることもできたのだろうか?

そんな事を考えていたときだった。
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