隠れイケメンの王子様に恋しました
大荷物抱えて、資料室に入りたくても手が届かなくて悪戦苦闘していたなの葉を見つけて、思わず後ろから手を伸ばし戸を開けてやった。

「わっ…!」

後ろからぬっと出てきた手にびっくりしたのか、なの葉がよろけて後ろにいる俺にぶつかった。
その時、微かに花の匂いがしてドキリと胸打つ。

「あ、大宮さんすいません、ありがとうございます」

俺の事、嫌がんないのか…?

振り返り嫌そうな顔をすると思ったら、俺に気付くとニコリと笑ってお礼を言うなの葉を不思議に思う。
ひょいと荷物を奪って中に入ると慌てたなの葉が付いてきてしきりに謝った。

「あ、大宮さん!すいません!忙しいのに持ってくれなくてもいいんですよ!」

「こんな重いの大変でしょ?今休憩中だから大丈夫」

嘘を言って安心させるとほっとした顔をしてまた新しい表情を発見してほくそ笑んだ。
仕舞うのも手伝ってやると終始ニコニコ顔で嫌がってるそぶりを見せない。

ほんとに不思議な子だ。
一緒に居るだけで心が和む。

たかが5分程度のたいした会話もなかったこの切っ掛けが俺を大きく変えていった。

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