隠れイケメンの王子様に恋しました
少しづつ、機会があれば挨拶するようになって、何か困ってるようなことがあると手を貸すようになった。
つい、花の匂いに誘われて近付き過ぎなのは分かってたけど、間近で頬を赤らめるなの葉が可愛くてやめられなかった。

とんだ変態野郎だ俺は…と、思いつつ、

ほんとに、少しづつ少しづつ、なの葉との距離を縮めていったさなか、ドアの向こうの食堂で大っぴらに俺の悪口を言う女子たちの声が聞こえた。

「ほんっとのっぽメガネが近く通るだけで鳥肌立つー」
「ぼさぼさ頭とよれよれの作業服何とかならないのかしら!あれ絶対洗濯してないわよ」
「無愛想だし、何考えてるんだかわからないし」

ねー?なんて周りに同調を強要してるのを廊下で聞いていた俺は、またやってるよとため息しか出なかった。
そんな時、聞き間違うことの無い耳馴染みのいい声が聞こえた。

「そうでしょうか?大宮さんの近くに居たら柔軟剤のいい匂いしますよ?それに、何かと助けてくれて優しいし、背が高くてかっこいいと思います」

「何言ってるのあなた?」

「あー!なの葉は誰にでも優しいから!決してお姉さま方に反論してるわけではないですよー!」

「あ、そう、優しいのはいいことだわ。でもあいつは無駄よ、優しくしても無愛想に睨まれるだけだから」

「そんなこ…もがもが…」

怪訝な先輩女子の声に、益川がフォローして先輩方は離れていったらしい。

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