起たたない御曹司君の恋人は魔女

「な、なんだ? 」

「あんな所に人が居るぞ」

「おい、飛び降りるんじゃないのか? 」

「警察に電話しろ! それから救急車! 」

 
 人が集まり騒ぎになっている。






 ビルの屋上。


 勇が思い詰めた顔で佇んでいる。



「・・・まだ迷っているの? 」


 フッと現れたのは、さっきいたブロンドの髪の女性。


 勇は振り向き女性を見た

「面白いのね。人を殺す時は、全然迷わないのに。いざ、自分が死ぬとなれば迷うの? やっぱり、命は惜しいのかしら? 」


「・・・勘違いしている。私は殺していな。あれは・・・事故だ! 本当に気づかなかったんだ! 」

「気づかなかった? そのまま逃げたくせに? 」


「に、逃げたのではない。怖くなって・・・その・・・」


 女性はニヤリと笑った。


「何が怖いの? 自分の立場を、なくすこと? 人を引いてしまえば、仕事もクビになると思った? そんなにあの会社って、器が狭い? 」

「当り前だろう! 事故を起こし、人を引いてしまったと分かれば。今後の事が心配になるのは、当然だ! 」

「だからって、そのまま逃げていい訳じゃない。・・・貴方が本当に見落としただけなら、助ける手段もあったはず・・・」

 
 フワリと、勇の体が宙に浮いた。 


「な、なんだ? 」

 恐怖に引きつった顔になる勇。


「一人でできそうもないなら、手伝いますよ。一瞬で終りますから」

「や、止めろ! 私には妻も、子供もいる。私がいなくなれば、家族はどうなる? 」

「そんな事、知った事じゃないわ。貴方が奪った命で、人生が狂ってしまった家族がいるのよ!
 何を今更言い出すの? 貴方の家族がどうなろうと、知った事じゃない! 」


 スーッと策の近くまだ勇の体が動いた。


「わぁ! や、止めてくれ! 」

 女性はフフッと怪しく笑った。



 バン!

 屋上のドアが開いて、結沙がやって来た。

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