起たたない御曹司君の恋人は魔女
ギュッと肩を抱いたリラ。
「どうしたの? 」
結沙が尋ねると、リラはハッとした。
「いいえ・・・なんでもありません・・・」
と、答えるリラだが、とても悲しそうな目をしている。
ヒラヒラ・・・
氷のような雪が落ちてきて、結沙の頬にあたった。
「ん? 」
またヒラヒラと落ちて来る雪。
結沙は手を広げた。
掌に落ちてきた雪がすぐに溶けてゆく。
「え? 雪? 」
驚く結沙。
リラは俯いて黙っている。
「そう言えば・・・」
結沙は思いだした。
リラと初めて結ばれた日。
あの時も同じような雪が降って来た。
その時。
リラは今と同じように、とても悲しそうな目をしていた。
「リラさん」
リラは俯いたまま結沙を見ようとしない。
「リラさんってば」
もう一度呼ばれて、リラはハッと顔を上げた。
「あ・・・何? 」
驚いて見つめるリラの目が潤んでいた。
「何も遠慮しなくていいから」
「え? 」
「ここにいて、いいんだよ。遠慮しなくていいんだから。父さんも母さんも、リラさんの事をとっても気にっているし。何か足らない物があれば、遠慮しないで言って。ずっと、ここにいていいから」
ずっと・・・いていい・・・。
その言葉に、リラの胸がキュンと鳴った。