起たたない御曹司君の恋人は魔女
結人と紗良の寝室。
紗良が後片付けを終えてベッドに入って来た。
「紗良、結沙とリラさん一緒に寝かせたのか? 」
先にベッドに入っていた結人が言った。
「ええ、その方が良いでしょう? 」
「まぁ、いいと思うけど」
「けど何? なにかあるの? 」
「いや。何となく、リラさんって普通の人とは違う感じがして。瞳の色が青かったし」
「ああ、それならお母さんがアメリカ人と日本人のハーフだって言ってたわよ。お父さんは日本人なんですって」
「ああ、それでかぁ。でも、なんで親戚が家を奪ってしまうんだ? 」
「詳しくはまだ判らないけど。いいんじゃない? そのうち話してくれると、思うから」
「紗良は随分、あの子の事信じているんだね」
「ええ、だって結ちゃんの好きになった人よ。何を疑うの? 」
「まぁ、疑うってわけじゃないけど。どこか、悲しそうな目をしているから気になってね」
「お母さん亡くしたばかりだもの。簡単には立ち直れないと思うわ。だから、私達が家族になってあげたらいいって思うの」
「そっか。それが一番良い方法だな」
家族になる。
そうする事でリラの悲しい気持ちも癒えて行く。
紗良はそう思っていたのだ。
それから数日後。
すっかり元気になりリラは仕事に復帰している。
覚えるのも早く、仕事にも慣れてきたリラ。
結沙との交際はまた誰にも話していないし、知られないようにしている。
朝は誰もきていないうちに1階まで降りて、近くのカフェでモーニングしてから出社して来ていた。
帰りも気づかれないように上に行っていた。
ちょっとコソコソするのは疲れる事もあるが、騒がれるよりはマシである。
暫く自宅待機になっていた勇が、仕事へ復帰してくる事が分かった。
ただし営業部長ではなく他の部での係長になっていた。