起たたない御曹司君の恋人は魔女
昼休み屋上。
リラが一人でやって来た。
囲いの屋根がついている屋上は、いつ来ても見晴らしがよく気持ちいい。
遠くを見てリラはニヤッと笑った。
「あの男、戻って来るんだ。・・・今度は、どうしてやろうかしら」
リラは携帯電話を取り出した。
そして電話をかけるリラ。
「・・・もしもし? ・・・何をそんなに驚いているの? ・・・ ・・・まだまだよ、これからだから・・・」
電話をかけながら、リラはニヤリと笑った。
「戻るも、戻らないも自由。…だけど容赦はしないわ。…次は必ず…」
怖い目をして空を見上げるリラ。
誰もいない屋上・・・
そう思われたが、リラの死角になる場所に・・・
結沙が居た。
結沙はリラの話し声を聞いて、じっと何かを考えているようだ。
リラは電話を切ると、結沙に気付かないまま屋上から去って行った。
リラが去ってからそっと姿を現した結沙。
リラが立っていた場所へ行って、空を見上げる結沙。
「さっきの声・・・あの電話の声と同じだった・・・」
(許さないから! )
そう。
あの事故の時、偶然にも拾った携帯電話。
まだ通話中で、結沙が話しかけると電話の向こうで返事をした女性。
その女性は母親を殺されたと思い込み、結沙に(許さない! )と言った。
その後。
病院から帰り路ですれ違ったブロンドの髪の女性に、結沙は初めて反応した。
その感覚は、リラへ反応した感覚と同じだった。
「まさか…あの電話の人が…」
結沙は何となく引っかかっていたものが、繋がってゆく感覚を受けた。