起たたない御曹司君の恋人は魔女
「リラさんって、とっても品があるし。普通の事務員って感じしねぇじゃん」
「・・・そう。残念ね、普通の事務員で」
「あ? 別にそんな意味じゃねぇよ。でも、色々大変だったんだな。まぁ、結沙も色々大変だったんだぜ。特に女関係はすげぇ苦労してたからなぁ」
あの結沙が?
優しくて気が利くし、女性なら胸がキュンとなりそうなイケメンの結沙が、女性関係で苦労してた?
リラは意外そうに驚いた。
「あのさぁ、結沙はぜーったい浮気なんかしないからな」
「はぁ? 何を言い出すの? 」
「いや、結沙は今まで「役に起たない、つまらない男」って言われてフラれてばかりだったし。結婚の話が出ていた事もあったんだが、いつの間にか破談してたからさっ。でも、リラさんにはすげぇ真剣。あんな目をした結沙、今まで見た事なかったからな。リラさんの事、本気で好きになっているんだって解るぜ」
「そうですか。・・・やっぱり、双子だと気持ちって分かり合えるのですか? 」
「ああ、そうかもしれねぇ。まっ、万が一結沙がリラさんの事を傷つけたら、俺がぶっ倒してやるから安心しなっ」
リラはフッと笑った。
雑な言葉ではあるが、その中に優しさがある。
でもどうして、私に声をかけて来たのだろうか?
いつも家で会ってもそ知らぬふりをしているし、話そうとしないのに、今日はどうして?
不思議そうに、リラは良人を見た。
「あ? なんだ? 俺の顔に、なんかついてるか? 」
「別に。・・・私なんかに、声をかけていいのかな? って思っただけ」
カフェオレを飲みながら、リラはまた外に目をやった。
「いつも1人で過ごしていたから。・・・私・・」
そう答えるリラの横顔が、とても寂しそう。
「過去何てどうでもいいじゃん。今、どうしているかが大切だろう? 」
え? と、リラは良人を見た。