起たたない御曹司君の恋人は魔女
「今、リラさんはどう感じているんだ? 俺達と一緒に暮らしてて、楽しいか? 」
「そりゃ・・・つまらない事はないけど・・・」
「じゃあ、それでいいんじゃねぇ? 」
それでいい・・・。
そうだけど・・・。
リラはスッと視線を落とした。
「俺、結沙のように優しい言葉なんてかけるガラじゃねぇし。上手くは言えねぇんだけど。悲しみは何をしても、急に消えねぇって事は分かる。それが、自分にとって大切なものを亡くしたなら尚更だ。たださっ、ドン底になるような事を味わった後にはぜってぇ幸せが来るって俺は信じている」
リラはゆっくりと視線を上げて良人を見た。
目と目が合うと、良人はちょっと照れたようで赤くなり、珈琲を一口飲んだ。
「苦っ・・・」
苦そうな顔をする良人を見ると、何故かリラは笑ってしまった。
小さく笑うリラを見て、良人も笑った。
「ここの珈琲ってマジで苦すぎ。もしかして、俺の珈琲出がらしってヤツだったか? 」
「・・・そうかもしれないですね」
リラもカフェオレを一口飲んだ。
「でもいっか。苦い珈琲でも、今日はリラさんと一緒に飲めたからさっ」
「え? 」
「だってさぁ。どんなに美味しい物を食べていても、一緒にいる人がつまんねぇど美味しくないじゃん。でもさぁ、多少まずくたって、一緒にいる人が楽しい人だったり素敵な人だと許せちゃうんだよなぁ」
「許せる? 」
「ああ。まぁ、よするに人間は幸せならみーんな許せちゃうってもんだな。だからさっ、リラさん」
「はい・・・」
良人はちょっとだけ真剣な目をして、リラを見つめた。
その眼差しに、リラはドキッとした。