起たたない御曹司君の恋人は魔女

「幸せになる道、選ぼうぜっ」

「・・・幸せになる道? 」


「そっ、幸せってのは楽しい事についてくるんだぜ。だから、楽しむんだよ。それがきっと、リラさんの亡くなった母ちゃんだって望んでいる事だからよぉ」


 母ちゃん? 

 なんとなく、良人の言葉にリラは笑えてしまった。


「あ? ここって笑う所じゃねぇんだけど。・・・まっ、いいか。とにかく、亡くなった人の願いは生きている人が幸せになる事だぜっ。俺の家で、リラさんが少しでも笑顔取り戻せたら、それでいいって俺も思っているからっ」


「有難うございます。・・・」


 悲しい目をしていたリラが、少しだけ微笑ましい目になった。



「おっ、そろそろ夕飯の時間だ。帰ろうぜ、家にさっ」


 
 帰り支度をして、伝票を手にしようとしたリラ。


「あ、これは俺が払うからっ」


 と、良人はリラの伝票をとった。


「いえ、そのくらい私が払いますから」

「何言ってんだよ、お茶代くらい男が出すもんだぜ。リラさんと一緒に過ごした時間には、全然足らないけど」


 そう言って、良人は伝票を持ってレジに行ってしまった。


 さりげない優しさ。

 それは結沙と似ていると、リラは思った。






 カフェを出たのは19時を回っていた。


「すっかり話し込んじまって、悪かったな」

「いいえ・・・」


 リラは良人の少し後ろを歩いていた。





 タワーマンションのエントラスにくると


「もう、結ちゃんったら相変わらずなんだね」


 楽しそうな話し声が聞こえてきて、リラは足を止めた。




 エントラスの隅で、結沙と小柄な可愛い女子が話しをしている。
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