起たたない御曹司君の恋人は魔女
6本当の私は・・・


 リラを探して。

 結沙はいつの間にかあの事故現場に来ていた。



 時間は20時を回る頃。

 この時間になると人通りが少なくなり、車の数も減っている。




 交差点で、ポツンと立っている人が居る。

 信号が青になっても渡ろうとしない。


 結沙は胸騒ぎがして、歩み寄って行った。



 交差点で佇んでいたのはリラだった。


 上着も来ていないリラは、ちょっと肩を竦めていた。




 リラに気付いて、結沙は駆け寄った。


「リラさん! 」

 結沙の声にハッとして、リラは振り向いた。


「どうしたの? こんなところで」

「・・・いえ・・・別に・・・」


 結沙は自分の着ていた上着をリラに着せた。


「寒いのに、そんな薄着で。風邪ひいたらどうするの? 」

「・・・すみません・・・」


 そう答えるリラが悲しげな目をしている。

 その目を見ると、結沙にもなんとなく気持ちが伝わってきて胸が痛んだ。



「ねぇリラさん。もしかして、この場所になにかあるの? 」

「・・・いいえ」



 ヒラヒラ・・・。

 またガラスの雪が降りだしてきた。


「雪・・・」


 夜空から舞い降りてくるガラスの雪は、とても綺麗で何かのイルミネーションのように見える。


「この雪は、リラさんが悲しい思をしていると降って来るんだね。まるで、全てを洗い流してくれるようで・・・。ねぇリラさん。ちょっと気になっているんだけど、聞いてもいい? 」

「・・・はい・・・」

「リラさんって、本当の名前なの? 」

 
 はぁ? と、リラは結沙を見た。


「ごめん、変な事聞いて。何となくだけど、リラさんってイメージじゃないと思っただけで。名前なんて、どうでもいいから」


 リラはフイッと目を反らした。


「あの・・・」

「え? 何? 」

「私、住むところ見つかったので。もう、貴方の家には戻りません。お世話になってしまい、すみませんでした」


 そう答えるリラの目が、ちょっとだけ泳いでいたのをゆいさは見た。

「どこに住むの? 」

「それは、言えません」

「どうして? 」

「別の親戚の家に・・・お世話になるので・・・」


 結沙はじっとリラを見つめた。
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