Before dawn〜夜明け前〜
「嫁に行けって言ってるに。
全くよぉ、おめぇのガンコは母親ゆずりだなぁ」
一条の顧問弁護士が決まったと報告すると、一樹は開口一番でそう言った。
「あら、ホメられた」
「ホメちゃいねぇよ」
「それで、顧問弁護士の契約のために、日本に行かなきゃならないの。
コペル社の件も片付いたからって、ボスが5日間も休みをくれたのよ。ホリデーついでに行ってくるね」
「ついでに、ジュンにウェディングドレスをデザインしてもらえ」
「もう、お父さんは〜」
いぶきは流石に苦笑する。
父の望みを叶えてあげたいけれど、まだ、心の準備が出来ない。
まずは、拓人の近くで、支えよう。
十年ぶりに再会したばかり。
お互い、高校生の時とは違うはずだから。
寄り添う時間が必要だから…