Before dawn〜夜明け前〜

九条家のお嬢様



「私が一条グループ筆頭顧問弁護士の、高司(たかつかさ)です。
桜木先生のアメリカでのご活躍、伺っておりますよ、よろしく」

予定通り、高司の他数名の弁護士立会いのもと、いぶきは契約書にサインをした。

「こちらこそ。
若輩者ですが、よろしくお願いします」

「副社長から、あのジェファーソン法律事務所の弁護士を連れて来ると言われた時はどんな方が来るのだろうと心配しましたが…
まさか、桜木先生のような若くて綺麗な女性の方だとは…驚きましたよ!」

いぶきは、小さく笑みを浮かべて首を横に振った。

ーー高司?懐かしいな、あのカタブツか。カツの同級生さ。昔、アイツの女がオレに惚れやがってよぉ。あのヤロウ泣いて女にすがってたっけ。
オレもよ、なんだか可哀想になって、2人くっつけてやったのさ。


父からあらかじめ情報を得ていたので、高司とは初めて会った気がしない。


「じゃ、皆は仕事に戻ってくれ」

高司の合図でほかの弁護士達はそれぞれの机に戻って行った。

「とりあえず、詳しく社内を案内したいのだが。
今、秘書課の者が来るから…と、あれ?
九条くんじゃないか?」

そこへ現れたのは、可憐なまるで花のようなふんわりとした雰囲気の、美しい女性だった。

「あ、高司先生、新しい弁護士先生はどちらですか?」

「副社長の方は大丈夫なのか?他に手が空いている者はいないのか?」

「はい。
副社長、あと一時間は会議なので。中山課長はその会議に同席です。北村さんは休暇で西川さんは受付のお手伝いに行ってます」

「そうか。じゃ、頼む。
彼女は、副社長の秘書で九条華子(くじょう はなこ)くんだ。
九条くん、こちらがジェファーソン法律事務所の桜木先生だ。
普段はNY支社をメインで動いてもらうが、日本に来ることもあるだろう。
社内の案内を頼む」

黒いタイトのパンツスーツのいぶきに対して、白のふんわりとしたワンピースに身を包んだ九条は、まるで正反対。

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