Before dawn〜夜明け前〜
ここへ来て、一気に空腹が加速した。
せめて飲み物でも買おうと自販機の前で財布を開けて、ハッとなる。
中身はドルのまま。日本円は、コイン一つ入っていない。使えるのはクレジットカードだけだが、自販機は対応していない。
黒川がいればすぐに対応してくれるが、こんな時に限って、いない。
「…はぁ」
思わず立ち尽くしてしまういぶき。
とりあえず、タクシーを拾ってホテルに帰り、ルームサービスを頼むのが最善だろう。
「どうか、しましたか?」
そこへ通りかかった男性社員が声をかけてきた。
「いえ、何でもないです」
「君、どこの課の子?見かけない子だね」
男はしつこく絡んでくる。
面倒くさくて振り切って帰ろうとした時。
「あ、桜木先生〜!」
通りすがりの女子社員のグループから、九条が手を振って駆け寄ってきた。
「今帰りですか?
初日からお疲れ様です。
あ、営業2課の、新川係長。こんな所でナンパはダメですよ」
「九条さーん、そんな人聞きの悪い。
それより、こちらの美人は?先生って?」
「顧問弁護士の桜木先生です。
先生、どうかされたんですか?」
九条はさりげなくいぶきの手元を見る。その手の硬貨がドルだということに気づいた。
「何でもありません。じゃ、お疲れ様でした」
いぶきは、パッと硬貨を財布に戻して立ち去ろうとする。
「そうだ、先生、ご飯でも一緒にどうですか?先生はアメリカが長いから、和食かな?
あ、新川係長はダメですよ。女子だけ」
九条は手で追い払うように新川を遠ざける。新川はスゴスゴと去っていった。
「ありがとう、九条さん。カード持ってるから食事は大丈夫です。お気遣いありがとう」
せめて飲み物でも買おうと自販機の前で財布を開けて、ハッとなる。
中身はドルのまま。日本円は、コイン一つ入っていない。使えるのはクレジットカードだけだが、自販機は対応していない。
黒川がいればすぐに対応してくれるが、こんな時に限って、いない。
「…はぁ」
思わず立ち尽くしてしまういぶき。
とりあえず、タクシーを拾ってホテルに帰り、ルームサービスを頼むのが最善だろう。
「どうか、しましたか?」
そこへ通りかかった男性社員が声をかけてきた。
「いえ、何でもないです」
「君、どこの課の子?見かけない子だね」
男はしつこく絡んでくる。
面倒くさくて振り切って帰ろうとした時。
「あ、桜木先生〜!」
通りすがりの女子社員のグループから、九条が手を振って駆け寄ってきた。
「今帰りですか?
初日からお疲れ様です。
あ、営業2課の、新川係長。こんな所でナンパはダメですよ」
「九条さーん、そんな人聞きの悪い。
それより、こちらの美人は?先生って?」
「顧問弁護士の桜木先生です。
先生、どうかされたんですか?」
九条はさりげなくいぶきの手元を見る。その手の硬貨がドルだということに気づいた。
「何でもありません。じゃ、お疲れ様でした」
いぶきは、パッと硬貨を財布に戻して立ち去ろうとする。
「そうだ、先生、ご飯でも一緒にどうですか?先生はアメリカが長いから、和食かな?
あ、新川係長はダメですよ。女子だけ」
九条は手で追い払うように新川を遠ざける。新川はスゴスゴと去っていった。
「ありがとう、九条さん。カード持ってるから食事は大丈夫です。お気遣いありがとう」