Before dawn〜夜明け前〜
「お嬢、お迎えにあがりました」


「OH、イブ、彼氏が来たよぉ!」

ダニエルが、迎えに来た黒川を見て凍った空気を変えようと、軽薄に告げた。

「いえ、自分は、ただの護衛です」

黒川にギロリと睨まれたダニエルは、まさにヘビに睨まれたカエルのように、さらに顔がこわばった。

「ハァーイ、ブラック。朝からお迎え大変ね」

「いやいや。放っておくと平気で何日も泊まり込みますからね、お嬢は」

ケイトは、黒川をブラックと呼ぶ。
いぶきの身の回りのことは、全て黒川が関わっているのですっかり顔なじみだ。

「じゃ、ケイト、あとよろしく」

いぶきが黒川と共に事務所から姿を消すと、途端にダニエルはふうっと息をついた。

「アレ、あの凄み。あの、目力。
やっぱり、ジャパニーズマフィアだろ」

ダニエルのつぶやきを無視して、ケイトはいぶきに託された仕事を始めた。





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