Before dawn〜夜明け前〜
ニューヨーク郊外の高級住宅地。

「ただいま」

「お帰りなさい、イブ。
旦那サマは、今、ドクターの診察中デス」

いぶきを迎えてくれたのは、アメリカ生まれの日系人、マリア・黒川だ。

「朝ごはんは、食べましたか、イブ」

「コーヒーだけ。
マリアのご飯が食べたい」

「わぁ、うれしい。カズマ、聞いた?」

「聞きました。お嬢、ありがとうございます」

喜んで黒川の腕を掴んで報告するマリア。そんなマリアに黒川も優しい目を向けた。

マリアは、元シークレットサービスに所属していた。事件に巻き込まれ、怪我で一線を退き、今は桜木家で護衛兼家政婦として働いている。
護衛としては超一流だが、家政婦としては、まだまだ勉強中だ。

黒川とは訓練所で出会い、紆余曲折あったものの、一線を退いた後に結婚した。

いぶきも羨むほど、仲の良い二人だ。

「さてと、ご飯の前にお父さんに怒られてくるか」

いぶきは、父の部屋へと向かう。



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