Before dawn〜夜明け前〜
「久我。
なんだ、ここにいたのか」
どこで昼食をとろうかと思っていた久我は、背後から声を掛けられた。
「あれ、珍しいじゃないですか。こっちにいるなんて」
「社長に会いに来た帰りだ。
せっかくだから久我と久しぶりに一緒にメシ、食おうと思って」
「それって、専務のおごりですよね?やりぃ」
久我は、嬉しそうにニカっと笑う。
「来客中だったみたいだが、誰だ?」
「あぁ、あの人です。
ほら、今、エントランスを出て行った女性。
アメリカの弁護士です。
昔、俺が鈴木工務店にいた頃に特許を取得したやつのことで話をしてたんですけど」
「へぇ、どこの弁護士だ?」
「あ、えっと」
久我はポケットから名刺を取り出した。
「ジェファーソン法律事務所、ニューヨークの事務所ですね」
「何!?ジェファーソン?
お前、それ、ニューヨークでトップクラスの事務所だぞ、すごいじゃないか、久我!」
「そうなんですか?
だとしたら、すごいのはこの弁護士先生ですよ。
どっかで見たことあるなぁって思ったら、光英学院に少し在籍してたみたいで。
秘書の男性は、たぶん、専務もご存知だと。あー秘書の名前、聞くの忘れた〜」
久我は名刺に印刷された名前を指差す。
ジェファーソン法律事務所
弁護士 桜木いぶき
「…専務?」
エントランスを見るが既にいぶきの姿はない。
「専務…?一条専務、どうかしましたか?」
「いや、なんでも、ない」
運命ってやつがやっと巡ってきたのだろうか。
あの夢の続きを現実に引き寄せる、運命ってやつが。
株式会社IJソリューションズ専務、一条拓人。
彼の目線の先には、10年前に手放した未来への希望が、暁のように暗闇を照らしはじめたように見えていた。
なんだ、ここにいたのか」
どこで昼食をとろうかと思っていた久我は、背後から声を掛けられた。
「あれ、珍しいじゃないですか。こっちにいるなんて」
「社長に会いに来た帰りだ。
せっかくだから久我と久しぶりに一緒にメシ、食おうと思って」
「それって、専務のおごりですよね?やりぃ」
久我は、嬉しそうにニカっと笑う。
「来客中だったみたいだが、誰だ?」
「あぁ、あの人です。
ほら、今、エントランスを出て行った女性。
アメリカの弁護士です。
昔、俺が鈴木工務店にいた頃に特許を取得したやつのことで話をしてたんですけど」
「へぇ、どこの弁護士だ?」
「あ、えっと」
久我はポケットから名刺を取り出した。
「ジェファーソン法律事務所、ニューヨークの事務所ですね」
「何!?ジェファーソン?
お前、それ、ニューヨークでトップクラスの事務所だぞ、すごいじゃないか、久我!」
「そうなんですか?
だとしたら、すごいのはこの弁護士先生ですよ。
どっかで見たことあるなぁって思ったら、光英学院に少し在籍してたみたいで。
秘書の男性は、たぶん、専務もご存知だと。あー秘書の名前、聞くの忘れた〜」
久我は名刺に印刷された名前を指差す。
ジェファーソン法律事務所
弁護士 桜木いぶき
「…専務?」
エントランスを見るが既にいぶきの姿はない。
「専務…?一条専務、どうかしましたか?」
「いや、なんでも、ない」
運命ってやつがやっと巡ってきたのだろうか。
あの夢の続きを現実に引き寄せる、運命ってやつが。
株式会社IJソリューションズ専務、一条拓人。
彼の目線の先には、10年前に手放した未来への希望が、暁のように暗闇を照らしはじめたように見えていた。