やってきた秋に、舌打ちをした。



――腕を折り曲げ、抱きしめてくれた。



「日菜乃、日菜乃」



何度も名前を囁いて。



眉を震わせて。



「千秋くん、千秋くん」



瞼を閉じても、目を開けても、彼の熱を感じる。



もう、感じられないはずだったのに。



「だいすき」



私たちは、どちらからともなくこぼした。



伝わっているかは、わからない。



千秋くんの熱は確かに感じるけれど、腕はすり抜けてしまう。



千秋くんが抱きしめてくれるけれど、それも生きていた頃とは違う。



それでも。



伝わるかはわからなくとも、言いたくなったのだ。



そのくらい、千秋くんがすきなの。



千秋くん、だいすき――。





千秋くんの濡れた瞳が、燃える橙の空を映し出す。



儚い命を映すかのように綺麗で、キラキラと輝いていて、私の恋に終わりがないことを示しているようだった。



END.
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