やってきた秋に、舌打ちをした。
「ねぇ、千秋くん」
あの頃とは違って、もう彼は振り返ってくれない。
私はこいつが、
「――大っ嫌いだ」
今度は口パクじゃなくて、吐いてみた。
それでもやっぱり、彼には聞こえない。伝わらない。
いざ声を出して、聞いてもらえなかったら。
そう思ったら怖くて、苦しくて、いままで声に出さなかったのに。
吐き出してしまった。
あふれてしまった。
――涙、ナミダ、なみだ。
ボタボタと地面に落ちて、地面はそんな私の片割れのことも、存在を確認してくれない。
当たり前か。本体である私も、確認されていないのだから。