やってきた秋に、舌打ちをした。



「……?」



不意に、俯いていた千秋くんが、顔を上げた。



葉の間から覗き込む、眩しい光に目を細め。



強く吹いた風と、なにかの気配に目を見開き。



……ねぇ、いま、私の声が聞こえた……?



「千秋くん、あのね」



キョロキョロと当たりを見渡しては、声を見ようとするような。



腕を伸ばしては、えぐってでも手にしようとするような。



「……っ、ちあ、き……」



あぁ、やっぱり、気づかれないか。



私じゃ、もう、ダメだよね。



「私は、もう、死んだんだよ」



自分の声がやけに冷えて聞こえたのは、風にさらわれたせい。



行方もわからず、飛ばされたせい。



誰も、私の声をつかんでくれないせい。
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