魔女狩り
#9
グレイオスの動きの方が幾ばくか速かった。
高々と上げられた腕は垂れ下がり、その男は意識を失っていた。
一方巨体の男はと言うと、抵抗軍の兵士に取り押さえられ、その動きは封じられれていた。
残りの投降兵も唖然とするしかなく、身動き一つ取れずにいた。
グレイオスの前には、ゼオの策略も児戯たるものだった。
…しかし、この児戯たる策略が、抵抗軍の運命を左右するとは、誰も思ってもみなかった。
その噂が流れ始めたのは、ゼオとの戦いがあってから、数ヵ月が経ったばかりの頃であった。
その噂とは、抵抗軍の三将軍の内、一人が魔女と内通していると言うものであり、それはまさしくキリクのことであった。
それが、グレイオスやラウルでなくキリクであったのは、王の見立てやゼオの感情によるものであり、この噂が抵抗軍に波乱を巻き起こすのは時間の問題であった。