魔女狩り
住民の退避が始まった。
家畜や家財を携えての移動は極めて遅いものであったが、住み慣れた土地を離れさせているのは、そもそも抵抗軍が原因であった。
そして、それを心得ていたラウルは、抵抗軍の兵に誠意を持って民を護衛させると共に、民の荷物すら兵に持たせていた。
これが、正にラウルの器であり、ラウルが騎士の鏡と呼ばれたる所以だった。
更にラウルは、殿としてジャイスに残っていた。
もちろんラウルだけでなく抵抗軍の兵も残っていた訳だが、指揮官自ら殿を務めるということは、民や兵に信頼感を与えるには十分だった。
そして、大規模な民の移動に国王軍が気付く頃、あの男、猪武者ゼノスが動くのだった。