死りとりゲーム


「あー⁉︎」


トップバッターの響子が、これまでで1番、驚いた声を上げる。


「いろいろ考えてたのにー!」と悔しげに吐き捨てる。


これまでのゲームでは、最初の文字は【ぶ】やら【び】など、濁点がついた難しいものだった。だから響子なりに予想していたのだろう。


それが、まさかの【あ】ときた。


「あい、あう、あえ、あお」とお決まりの呪文を唱え出す。


【あ】なら、いくつも思いつきそうだけど?


これまでも出てこなかったか?


確か、悠馬が『ライター』を出したとき、次の明香はふた通りの答えを用意していた。【た】で終わるか【あ】で終わるか分からなかったからだ。


その時【あ】の物も用意してあったはず__?


「そうだ!」


響子がロッカーに飛びつく。


それは明香のロッカーで、中を覗いている。


「じゃーん!」と取り出したのは、タッパーだ。


その中には、黒い塊が敷き詰められていて__まだ置いてあったんだ。


明香が用意していた「あんこ!」が。


『クリアです』


「きっと、明香が助けてくれたよ。だから史恵も頑張って」


「うん!」


明香の思いを、ムダにしちゃいけない。


私はすぐに教室を飛び出した。


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