死りとりゲーム


職員室の隅には、給湯器がある。


小さな冷蔵庫も置いてあって、生徒たちはズルい!といつも口にしていた。


私は、冷蔵庫を勢いよく開ける。


お目当のものを引っつかむ。


【こ】で始まるもの『コーヒー』だ。


コーヒーを取り出しかけて、ふと考える。


【ひ】で終わる。


もし次の賢太が、それを【る】で終わらせたら?


『ひーる』という言葉が、すぐに浮かんだ。


女の先生の私物を探せば、すぐにヒールが出てくるだろう。


チラッと賢太を見ると、顔が腫れ上がっていて表情はよくわからない。


みんなで協力すると約束したけど、本心だろうか?


でも、新田くんを殺す理由がない。


率先していじめていたのは悠馬で、復讐の目的は果たしたはずだ。


それなのに、どうしても引っかかる__。


「田辺、俺のことなら気にしなくていい」


そう言ってくれたのは、新田くんだ。


意味がわからず「えっ?」と尋ねる。


「俺は大丈夫だから」


優しい瞳に、吸い込まれそうだ。


私が迷っているのは賢太が【る】で終わらせる可能性があると、新田くんは気づいている。万が一【る】が来ても大丈夫だと言っているんだ。


賢太を飛び越えて、気持ちが通じ合った気がした。


ここは新田くんを信じよう。


信じるけど__。


私は『コーヒー』の隣の「ココア!」を取り出した。


『クリアです』




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