死りとりゲーム


「悪い」


それだけ言うと、新田くんが私から離れていく。


めぐみの元へ、吸い寄せられるように。


もし手を伸ばせば、引き止めることができるの?


呼び止めたら、振り返ってくれるの?


涙で霞むなか見えたのは、新田くんがめぐみを抱きしめる姿だった。


私のときよりずっと、強く強く抱きしめている。


「田辺さんのところに行ってあげて。田辺さんは大事な友達をなくしたんだから」


めぐみの声が聞こえた。


新田くんを取り戻した自信がそうさせるのか、めぐみは私に向かって優しく微笑んだ。


彼氏と抱き合っていたというのに__。


その瞬間、私は駆け出した。


廊下を闇雲に走り、押し出されるようにして校舎から飛び出す。


新田くんの温もりがまだ、体に残っている。


あれだけ濃密な時間を過ごし、協力し、喜びを分かち合い、戦い、同じ目標に向かって足踏みを揃えているのに__めぐみには敵わない。


しかも、もうあと1回でゲームが終わる。


そうすれば、新田くんと過ごす時間はなくなってしまうだろう。


気がつけば、校舎横の【うさぎ小屋】に来ていた。


腰をかがめて中を覗くと、真っ白なうさぎがぴょんぴょんと飛び跳ねている。


「ぴょん太」


そのうちの1匹に、私は呼びかけた。


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