死りとりゲーム
「__田辺?」
「えっ、あっ、私か⁉︎なんだっけ?く?」
慌てて、教室内を探し始める。
これまでは響子が1番手だった。
2番手の私は、響子が選びそうなものを予測したり、心の準備ができたけど、その響子が抜けたことによって順番が繰り上がったんだ。
いきなり始めの文字を突きつけられるのは、さすがに慌てる。
それを今まで響子はクリアしていたんだから、大したものだ。
しかも【ぐ】や【び】など難しいものばかり。
「く、く、く?」
それを考えると【く】なのは有り難い。
すぐにいくつも浮かんでくる。
『くつ』や『くつした』なんか、今すぐクリアできるし『くし』も女子の私物を探せば出てくる。校舎を飛び出して『くさ』でもいい。
選択肢はたくさんあった。
問題は、そのどれを選ぶか?
チラッと賢太を見ると、怖い顔をしてぶつぶつ何か呟いている。
まだ、1抜けした響子に腹を立ててるんだ。
とはいえ、賢太が響子に何かするわけでもないし、もし文句の1つでも言いたいなら、ゲームをクリアするしかない。
地道な作業だけど、1つずつクリアを重ねてポイントを貯めるしかないんだ。
ラストに控えているのは新田くんだし、私が考え込む必要はない。
私は靴を脱ぎ「靴下!」と言った。
『クリアです』